[評]主人公の素直な気持ちを追って、ていねいに話が作られています。まず、つきあいはじめたときの幸せいっぱいの浮かれた気持ちと、ささいなことでも気になってしまう不安な気持ちとがよく伝わってきます。彼氏ができたことを家族に話すとき、少しでも印象がよくなるように伝えようとするなど、気持ちを表現する細かいエピソードづくりが上手にできているからだと思います。並木と仲たがいをして落ちこんでしまったとき、テレビを見ながら大好きなアイドルとかも並木のようによく見えない、と表現しているようなモノローグも上手です。全体に派手なエピソードはないものの、主人公たちの性格をしっかり伝えることができていて、実力を感じます。細かいセリフの面白さもあり、全体にコミカルな雰囲気が作れています。ただ、ライバルの姫野さんの役割が中途半端だったのが惜しいです。単なる美人なライバルという存在だけで終わってしまいました。姫野さんが並木のどういうところが好きかを描ければ、結果的に主人公の彼氏の魅力をもっと表現できたかもしれません。 絵は、とても見やすく好感がもてます。あまりバランスが崩れずに、ていねいに描けているのもいいです。描線の太さにメリハリをつけ、細い線が効果的に使えるとよりよくなると思います。山口さんは、どことなくほのぼのとして楽しい作品が描けていけそうです。これからも自分らしい作品を描いていってください! |